マイクロソフトリサーチ:トニー・ヘイ副社長が会見

データ集約型eサイエンスが主流に、生命科学・環境科学領域で成果期待

 2012.09.15−米マイクロソフトリサーチのトニー・ヘイ産学連携部門担当副社長(Tony Hey)がこのほど来日し、記者懇談会を開いた。いくつかの研究プロジェクトの例をあげながら、膨大な学術データを整理・体系化し、データを出発点に理論や仮設を構築していく“データ集約型の研究方法”(eサイエンス)が浸透している現状を紹介した。ヘイ副社長は、eサイエンスによる成果が期待される有望な研究領域として、生命科学分野と環境科学分野に注目していると述べた。

 マイクロソフトリサーチは、マイクロソフトの基礎研究所として1991年に設立された組織で、米ワシントン州レドモンドを中枢に、インドのバンガロール、北京、米マサチューセッツ州ケンブリッジ、英国のケンブリッジ、米国のシリコンバレーとニューヨークの合計7ヵ所に研究拠点を展開している。現在、900人の研究者が60の研究分野で仕事をしている。日本人研究者は6人だが、毎年増加しているということだ。

 ヘイ副社長は「科学研究に第4のパラダイムが訪れつつある」とする。大量のデータを活用する研究方法を指したもので、研究者は必然的にICT(情報通信技術)を駆使して科学上の課題に取り組むことになる。

 eサイエンスの研究プロセスとしては、「データの取得とモデル化」「コラボレーションと視覚化」「解析とデータマイニング」「知識の公開と共有」「知識の記録と保存」といったライフサイクルを回すことが必要になる。

 それぞれの領域で端緒となる基礎研究がいくつか進んで実績もあがっているが、「eサイエンスを完全に実現するためにはまだツールが足りていない。研究組織間の連携、学際的な知識の交換、分散しているデータや地理的な隔たりを克服する方法など、まだ十分には解決されておらず、今後さまざまなICTツールを開発していく必要がある」とヘイ副社長。

 「ツールが出てきてそれが使われることにより、多くの科学者にとってeサイエンスの方法が一般的なものとなれば、将来的にはeサイエンスなどという特別な言葉で呼ばれる必要はなくなるだろう」とした。

 とくに、eサイエンスの成果が期待できる研究領域としては、「生物・遺伝子の分野で、10年ほどのうちに素晴らしいことが起きると思う。糖尿病やエイズなどの病気との闘い、バイオ燃料を多く生み出すように植物の遺伝子を調整すること、またケンブリッジで行っているDNAコンピューティングというユニークなプロジェクトもある。また、環境科学もeサイエンスが力を発揮する好例だ。地球環境はまさにシステムサイエンスであり、さまざまな要素が関連し合っている。多様なデータを扱うデータ集約型のeサイエンスで環境科学は新しいステージに進むと思う」との見解を示した。

******

<関連リンク>:

マイクロソフトリサーチ(トップページ)
http://research.microsoft.com/en-us/default.aspx

マイクロソフトリサーチ(第4のパラダイムに関する解説ページ)
http://research.microsoft.com/en-us/collaboration/fourthparadigm/

マイクロソフトリサーチ(生物学分野のページ)
http://research.microsoft.com/en-us/groups/biology/default.aspx

マイクロソフトリサーチ(環境科学分野のページ)
http://research.microsoft.com/en-us/groups/ecology/default.aspx


ニュースファイルのトップに戻る