米CASなどが「STN」の新プラットホーム版を提供開始

検索作業をプロジェクト単位で管理、質問式・検索履歴など一覧性向上

 2013.07.24−米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)と独FIZカールスルーエは、科学技術文献・特許情報サービス「STN」の新プラットホームを、このほど正式に提供開始した。コマンドライン操作を中心にした検索のプロ向けのツールだったが、今回は完全ウェブベースとなり、プロ向けの高機能性はそのままに、使いやすさを大幅に向上させた。高速化された検索速度、リアルタイムでの解析、回答の処理効率の向上、検索能力の増大などを通し、プロの仕事の生産性が格段に高まるという。現在はまだバージョン1であり、利用できるデータベースの数が限られるため、当面は旧プラットホーム版も並行して提供される。

 STNは、化学、化学工学、医学、薬学、電気、電子工学などの広範な科学技術分野の文献・特許情報を網羅した検索サービスで、日本では化学情報協会(JAICI)がSTNの東京サービスセンターとしての役割を担っている。約150種類のデータベース(STNではファイルと呼ぶ)にアクセスでき、世界の主要な特許庁や研究機関の審査官・知財専門家などのプロの要求に応えることを目的として運営されている。

 今回の新プラットホーム版は、半年にわたるベータテストに参加した数百機関からのフィードバックを反映させたもの。画面(写真参照)は大きく3分割されており、左の上段に質問式(検索コマンド)を入力すると、右側に検索結果が表示される。左の下段では検索履歴を確認できる。旧プラットホームではすべてが上から下へテキスト表示されるため、見たい部分を探すのにスクロールを繰り返す必要があった。このため、新プラットホームは一覧性に優れている。検索結果の詳細表示も、ディスプレイコマンドで画面を切り替えることなく、リンクをクリックするだけで表示できる。

 また、旧版では検索結果に対してアナライズコマンドを使って解析モードに切り替える必要があったが、新版では検索と同時に解析が終了しているので、注目したいデータ項目名などをチェックすることにより、リアルタイムで回答の絞り込みなどが可能。

 とくに、旧版はログインからログアウトまでのセッション単位で動いていたため、保存操作を行わなければ、それまでの作業履歴は失われた。パソコンがフリーズした場合も同様で、多くのユーザーがストレスを感じたという。それに対し、新版は基本的にプロジェクト単位で作業内容が管理される。セッションが途中で切断されても、プロジェクト履歴はサーバー内に保存されており、いつでも再開が可能。ログインすると、最初に自分のプロジェクトリストが表示されるようになっており、複数のプロジェクトを組織化して、同時に効率良く進めることも容易である。

 検索時のシステム制限も解消されており、旧版ではコマンドを256文字以下に収める必要があったり、あまりにヒット数が大きくなるような質問式だと検索が終了しなくなったりするなどの問題があったが、新版ではユーザーは制限を気にせず質問式を立てる作業に集中できる。

 さて、現在新版で利用できるファイルは、化学物質データベース「CAS REGISTRY」、広範囲の学術論文・特許情報を網羅した文献データベース「CAplus」、トムソン・ロイターの特許データベース「Derwent World Patents Index」(DWPI)の3つ。今年後半から徐々にファイル数を増やしていく。また、現在は定額契約ユーザーのみが新版の利用対象だが、来年からは従量制ユーザーも新版を利用できるようになるという。

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<関連リンク>:

米CAS(STN製品情報ページ)
http://www.cas.org/products/stn/

独FIZカールスルーエ(STN製品情報ページ)
http://www.stn-international.de

化学情報協会(STN製品情報ページ)
http://www.jaici.or.jp/stn/stnint.htm


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