アクセルリスが材料設計支援「Materials Studio」の最新版7.0

並列化などシミュレーション機能強化、応用範囲拡大へ

 2014.01.08−アクセルリスは、次世代材料設計のための統合モデリングシステム「Materials Studio」(マテリアルスタジオ)の最新バージョン7.0をリリースした。シミュレーション機能を強化し、適用範囲を拡大させたことに加え、研究組織間・研究者間の連携を推進するコラボレーション機能も高度化している。特殊化学品や医薬品、一般消費財、食品分野、さらには電子部品や燃料電池開発などのハイテク分野における材料開発を支援できる。

 今回の最新バージョン7.0では、最新の科学技術を反映させたシミュレーション機能はもちろんのこと、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)が大幅に改善され、エキスパートにも初心者にも使いやすいシステムになった。ポイントは、独自のスクリプト言語“MaterialsScript”を用いて「Materials Studio」のほぼすべての機能をコントロールできるようになったこと。言語自体はPerlベースでわかりやすいが、今回はGUIのダイアログで行った計算設定を“MaterialsScript”のかたちでテキスト形式でコピーできるようになった。これを貼り付けることで、Pipeline Pilot 用のカスタムコンポーネントを簡単に作成することもできる。Perlに不慣れな一般ユーザーでもいろいろな応用ができるとともに、エキスパートなら自分で編集してさらに高度な使い方が可能。

 また、コラボレーションを考慮し、構造やトラジェクトリー、およびテーブルデータを古いバージョンのファイル形式でエクスポートできるようにした。回線速度が遅い環境にも合うようにファイルを自動的に圧縮する機能も組み込まれている。オンラインヘルプがウェブ形式に変わったことも、初心者には使いやすくなったという。

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 さて、肝心のシミュレーション機能だが、まず量子力学系では密度汎関数法エンジン「DMol3」の高速化が大きなポイント。とくにアルゴリズムの改良で並列処理効率が向上しており、原子数の多いモデルでも高速に計算できるようになった。同社では同じ16コアと32コアの環境で前バージョンとのベンチマークを行い、ゼオライトの構造最適化計算で144原子と288原子、576原子の系でそれぞれ計算時間を比較した。その結果、計算精度はまったく同等で約4倍の計算速度の向上が確認できたという。DMol3ではそのほかに弾性定数などの力学的特性が計算できるようになったことも注目されている。

 平面波基底の第一原理計算を行う「CASTEP」では、NEB(ナッジドエラスティックバンド)法による遷移状態の計算、反応経路の探索が可能。励起状態の構造最適化機能も搭載された。

 さらに、密度汎関数理論に基づくタイトバインディング法プログラム「DFTB+」を使用して、透過率および電流電圧曲線などの電子輸送特性が計算できるようになったことも最新版の目玉になるという。これは、非平衡グリーン関数法(NEGF)によるもので、分子系と周期系の両方に対応しており、カーボンナノチューブの Srone-Walse欠陥の解析などの用途にも役立つ。

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 一方、古典力学系のシミュレーション機能では、新機能として分子動力学法プログラム「Forcite Plus」による溶媒和自由エネルギー計算機能が追加された。対象分子の溶媒への溶解度を推定することができるため、医薬や化学分野のユーザーからも強い関心が寄せられている。

 また、新しい力場である「COMPAS II」をサポート。これは、実験値からの誤差が非常に小さいことが特徴で、メイブリッジのスクリーニングデータベースに基づくあらゆる力場タイプをカバー。正確な構造、配座、振動、密度、熱力学物性の予測が可能であり、硫黄を含む化合物やイオン性液体への対応がなされている。とくに、リチウムイオン電池関係などイオン性の分子を対象にした計算へのニーズが増加していることを考慮したものでもある。

 とくに、「Forcite Plus」および「Mesocite」(粗視化分子動力学法)での静電相互作用計算で“P3M Ewald法”が利用できるようになったことで、3,000原子以上の大規模な荷電した系での解析が大幅に高速化された。

 そのほか、ウェブサイト(http://references.accelrys.com/)で「Materials Studio」を利用して発表された論文検索を行うことが可能。プログラムの名称や発行年、キーワードでフィルタリングすることも可能で、新しい計算に取り組む際などの参考資料を容易に見つけ出すことができる。ユーザーであればだれでも無料で利用できる。

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<関連リンク>:

アクセルリス(日本法人のトップページ)
http://accelrys.co.jp/

アクセルリス(マテリアルスタジオの製品情報ページ)
http://accelrys.co.jp/products/materials-studio/index.html


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