英ドットマティックスが日本市場に本腰

日本支店を開設、電子ノートなど創薬研究基盤の更新需要狙う

 2015.05.23−英ドットマティックス(スティーブ・ギャラハーCEO)が日本市場に本腰を入れる。創薬研究を中心にした化合物情報・実験データ管理などのケムインフォマティクスソリューションを提供するベンダーで、このほど日本支店を正式に開設し、東京と大阪で初のオープンセミナーを開催した。最新のIT環境をベースに、電子実験ノートブック(ELN)などを含めた統合的な研究基盤を提供できるのが強み。多くの製薬企業において更新期にある古いプラットホームのリプレースを積極的に狙い、国内の大手システムインテグレーターとの提携にもめどを付けつつある。今回は、グローバルコマーシャルオペレーション担当のリチャード・リンガード上級副社長(Richard Lingard)、グローバルインフォマティクス担当のロバート・ブラウン副社長(Robert Brown)、日本支店の福山隆カントリーマネジャーにインタビューした。

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 ドットマティックスは、ロンドン近郊のビショップスストートフォードに本社を置いており、設立は2005年。製品のルーツはメルクが15年前に開発したソフト(現製品名=BROWSER)で、スピンアウトしたのちは外部からの資金を受けることなく、独立系のベンダーとして成長してきている。ここ数年で社員をほぼ倍増させており、現在の社員数は93人。人員構成は、アプリケーションサイエンティストと営業マンが2対1の割合であり、技術重視の企業だということだ。

 日本市場に関しては、2009年にインフォコムと代理店契約を結んだ。既存ユーザーのサポートなどでこの関係も継続するが、日本支店を3人体制とし、新規の販売は直販でも行う方針。国内のパートナー戦略もゼロから再構築し、大型のリプレース案件をカバーできる体制をつくりあげる。なお、日本支店の所在地は、東京都港区新橋4-21-3、新橋東急ビル3階。電話03-6895-7390。

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 − 最近の業績や導入実績について教えてください。

 リンガード氏「最新の会計年度でいうと、売り上げは前年度比で30%の伸び。ほとんどがライセンス収入であり、サービスは5%ほどしかない。地域ごとの売り上げは、米国と欧州がほぼ半々だが、最近の伸びは米国市場の方が大きい。約300社の顧客があり、ユーザー数は2万人。無料の構造式作図ツールELEMENTALは100万人に使われている」

 − 現在の製品ラインアップはどうなっていますか。

 ブラウン氏「電子実験ノートのSTUDIES NOTEBOOKを中心に、化合物情報を登録するREGISTER、生物情報登録のためのBIOREGISTER、サンプル管理のためのINVENTORY、さらにアッセイデータ管理のSTUDIES、作業指示とトラッキングのCASCADE、化合物情報とリンクしたドキュメント管理やコラボレーションが行えるGATEWAY、データ統合とデータベースへの自動登録を行うETLツールのNUCLEUSなどが揃っている。また、蓄積・取得した大量のデータを活用するための製品群として、データ連携・照会・レポーティングのためのBROWSER、対話的にデータ解析・可視化を行うVORTEX、マイクロソフトオフィス上で化学構造を扱えるようにするD4Oなどが利用できる」

 リンガード氏「すべて最新テクノロジーをベースに構築されていることが特徴。外部のアカデミアや受託機関と協調するオープンイノベーション型の研究開発では、相手のIT環境に柔軟に対応する必要がある。ドットマティックスのソリューションはその意味で最適で、プラットホームを選ばない。同時に、どんなデータソースにも自由にアクセスできる。長年蓄積してきたデータ資産も有効活用が可能だ」

 ブラウン氏「現在、オンプレミス型での利用が70%、クラウドホスティング型が30%という割合。クラウドのデータセンターはアマゾンウェブサービス(AWS)を利用しているが、当社が責任を持ってサポートするので安心してほしい。大口顧客であるアストラゼネカも、CROとの連携に当社のクラウドを利用している」

 − 日本市場では、電子実験ノートへの関心が高まっています。欧米の状況はいかがですか。

 リンガード氏「電子ノートがホットなのは日本と同じだと思う。小規模なバイオ企業も積極的に導入しているし、大手のメガファーマは電子ノートの世代交代を進めてきている。ドットマティックスのSTUDIES NOTEBOOKは2009年に発売したシステムで、200社/1万人の稼働実績がある。先発の他社製品は古いアーキテクチャーを引きずっているので、バージョンアップするだけで6ヵ月もかかったりする。しかし、STUDIES NOTEBOOKであればプロジェクト全体で2週間あれば導入が可能だ。実際、システム更新時の移行期間の長さやコストの問題で、STUDIES NOTEBOOKにリプレースする顧客が多い。テンプレートがしっかりしているため、クラウド版なら40分でスタートできる」

 ブラウン氏「他社の電子ノートにアクセスするためのカートリッジも用意しており、リプレースしなくても、BROWSERから他社ノートに格納されたデータを自由に引き出して活用することができる」

 − 日本市場に対する戦略についてお話し下さい。

 福山氏「直販と代理店販売の2本立てで進める予定で、アカデミック/官公庁市場については総代理店を立てて任せることにしたい。民間向けは直販で、システムインテグレーターにプロジェクトをバックアップしてもらう。現在数社と交渉中だ。日本市場は、2000年代半ばまでに化合物情報管理で支配的な地位を築いた旧MDL(現BIOVIA)製ISISのサポート終了を2016年7月末に控えて、入れ替え需要が本格化するとみている。これを積極的に獲りにいく考えで、そのための事業体制を早急に固めたい。周辺のアプリケーションを含めて、ISIS系のシステムをそっくりリプレースできる製品群は揃っている。移行を後押しする特別なライセンスも準備する予定だ」






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<関連リンク>:

英ドットマティックス(トップページ)
http://www.dotmatics.com/


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