富士通が「SCIGRESS」最新バージョン2.8.1をリリース

Quantum ESPRESSOのGUI対応を実現、LAMMPSとの連携強化も

 2016.12.22−富士通は、材料設計をターゲットとした計算化学統合プラットホーム「SCIGRESS」の最新バージョン2.8.1を来年1月にリリースする。外部の計算エンジンとの連携機能を強化しており、第一原理計算プログラム「Quantum ESPRESSO」や分子動力学プログラム「LAMMPS」を容易に活用することが可能になった。計算用のモデル構築から、入力ファイルの設定・作成、計算実行、計算結果の解析まで、SCIGRESSのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を用いて行うことができる。

 SCIGRESSは、単分子だけでなく、高分子/デンドリマー、カーボンナノチューブ(CNT)、物質の界面、結晶、液晶などをモデリングできる統合システムで、自社開発の分子軌道法および分子動力学法エンジンを内蔵している。最近では、外部の計算エンジンを組み込んで利用するプラットホーム化を積極的に進めており、今回の機能強化もそれが焦点となっている。

 今年6月末にリリースされたSCIGRESS 2.8はLAMMPSとの連携強化がポイントで、前処理計算に多用されるLAMMPS Minimize機能をGUIで設定・操作したり、結晶系モデルの体積緩和を行ったりすることが可能になった。また、水素をあらわに扱いながら高速計算するLAMMPS RESPA積分法への対応、antechamberを使ってLAMMPSでGAFFポテンシャルを割り当てる機能の実装、Linux版LAMMPSとの連携、Windows版LAMMPSの並列計算への対応なども行われた。

 来年1月リリース予定のSCIGRESS 2.8.1では、擬ポテンシャルと平面波を使う第一原理電子状態計算プログラムであるQuantum ESPRESSOとの連携強化がメインになる。2.8では計算条件の設定や入力ファイルの作成、結果ファイルを読み込んでの解析など、ファイル経由の連携に留まっていたが、2.8.1で完全GUI対応となった。

 SCIGRESSのGUIにQuantum ESPRESSOのためのメニューが追加されており、CIF(結晶学情報共通データ・フォーマット)ファイルを読み込んで空間群展開などを行ったあと、計算条件を設定することが可能。設定は、SCF計算やバンド構造、状態密度などの目的に応じて行うが、デフォルト値が入力されており、詳しくないユーザーはそのまま計算してもかまわない。計算メニューの選択と計算の実行は、計算対象や計算目的、計算手法を一目で把握できるSCIGRESS独自のプロシージャーブラウザーで項目を選択してボタンを押すだけ。計算が終了すると、バンド図や状態密度図が自動的に表示される。

 さらに、バージョン2.9以降の予定としては、Quantum ESPRESSO関連では、構造最適化計算への対応、ブラベ格子の判定、PDOS表示、第一原理MD計算結果のアニメーション、LAMMPS関連では、クーロン力(pppm、msmなど)の設定、分子内非結合相互作用の設定、テーブルポテンシャルへの対応、ハイブリッドポテンシャルへの対応など。また、GAMESSおよびGaussian連携機能の強化として、ラマンスペクトルの計算、NMRスペクトルの計算などがあげられている。

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<関連リンク>:

富士通(テクニカルソリューションのページ)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/

富士通(SCIGRESS 製品情報ページ)
http://www.fujitsu.com/jp/solutions/business-technology/tc/sol/scigress/


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