パーキンエルマーのクラウドELNが大学向けで成長

年間使用権無償が奏功、来年に製品体系を一新

 2016.12.06−パーキンエルマーのクラウド型電子実験ノートブック(ELN)「Elements」が大学向けで実績を伸ばしている。「ChemOffice」のサイトライセンス購入者に1年間の使用権を無償で提供した作戦が効を奏したもの。とくに、研究不正を防止する目的で、実験の記録を電子的に管理したいというニーズがあったが、費用の面で導入が難しかったという。今年10月に開催されたユーザー会でもいくつかの事例が紹介された。同社では、ELN戦略におけるクラウド版の位置づけをあらためて強化し、来年から新しい製品体系を具体化する計画も立てている。

 大学では現在、研究者倫理の向上が課題とされており、論文などの研究成果に疑念が示された場合、研究者の責任において実験記録・証拠を提示して疑いを晴らさなければならないとされている。このため、研究不正を未然に防止するための情報管理ルールの作成を急いでいる大学もあるが、費用の問題もあってなかなか進んでいないの実態だという。

 一方、パーキンエルマーは製薬企業向けのELN「E-Notebook」で豊富な導入実績を築いているが、これを大学向けに展開するのは難しかった。同社は、2013年にWingu社を買収してクラウド型ELNの「Elements」を戦列に加えており、この年間使用権をサイトライセンスユーザーに無償提供することによって大学のニーズに応えることを狙った。「Elements」は日本語化されていないため民間企業向けには難しいと考えられていたが、大学は留学生も多いことから実験ノートを英語で作成することが基本になっており、逆に都合がよかったという面もある。

 今年のユーザー会では大阪大学の導入事例が発表されたが、すでにいくつかの大学の薬学部や理学部などで利用がはじまっている。クラウド版であるため、導入にほとんど手間がかからず、すぐに本番稼働に入ることができるようだ。

 一方、海外の事例では、「Elements」を「E-Notebook」のフロントエンドに位置づけ、CRO(医薬品開発受託機関)などの外部パートナーとの業務連携に使用するケースが増えている。製薬会社が社内の「E-Notebook」から出した試験依頼を「Elements」のリクエストキューに変換して、CROが「Elements」内でその作業をアサイン。試験データは「E-Notebook」に自動転送され、最終的に製薬会社の社内システムに登録される。

 このようなクラウド版ELNの活用をさらに推進するため、同社は来年に新たな製品展開を計画している。現在、大学などで利用されているスタイルの「Elements Basic」を「ChemDraw E-Notebook」、企業向けの連携型「Elements Pro」を「E-Notebook Cloud」として位置づけ、あらためて機能強化を図っていく。今後の方向性が注目される。

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http://informatics.perkinelmer.co.jp/


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