CCS特集2017年夏:TSテクノロジー

包括型受託契約が成長、製品化目指して開発も強化

 2017.06.21−TSテクノロジーは、山口大学発ベンチャーの計算化学専門ベンダーとして、医薬・化学・材料メーカーの研究開発を独自のノウハウで支援している。事業内容は、ソフトウエアの開発・販売から科学技術計算用ハードウエアの構築・提供まで幅広いが、最近はとくに受託計算/受託研究などのサービス事業が好調。ニーズに応えるため人員も増強している。

 同社の受託サービスは、あらかじめ決まった物性計算などを行う「クイックオーダー」、ニーズに合わせてカスタム対応する受託研究タイプの「フルオーダー」、年間単位で専属の計算担当者と計算資源を準備し、社内の専門スタッフのように活用できる「包括連携契約」(FTE契約)の3種類があり、顧客は全国に広がっている。

 FTE契約では、広い視野から研究協力するため、特定のテーマに絞った受託解析では難しかったような成果をあげることが多い。例えば、機能材料の蒸着メカニズムを解明するための研究で、前駆体である金属錯体の熱的安定性を高める示唆を得るため、乖離エネルギーの計算から分子構造の結合が切れる位置を探索したなどの事例がある。のちに実験を行い、計算と一致する結果が出ているという。

 一方、将来の製品化を目指した社内開発にも力を入れている。とくに、継続的に整備しているのが遷移状態データベース「TSDB」で、人名反応を中心にデータを増やしてきている。遷移状態に関する量子化学計算結果を収録したもので、化学反応解析や合成経路開発に役立てることができる。現在は試用版として無償公開中だ。

 また、キネティクス(反応速度)シミュレーションも同社の独自技術で、量子化学計算による反応速度定数をもとに物質の生成比を予測することが可能。今年3月の化学工学会でポスター発表を行っている。

 そのほか、畳み込みニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)を使って、機能性化合物を探索する新しいアルゴリズムを開発した。数百万のコンホメーションを発生させ、3次元構造記述子計算や電子状態物性計算などを段階的に実施して、有望な構造を100個程度に絞り込んでいく。一連の処理をすべて自動化したことが特徴だという。


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