モルシス:後藤純一社長インタビュー

技術重視の会社に、パートナー各社も独立を歓迎

 2017.04.21−新ベンダー、モルシス(本社・東京都中央区、後藤純一社長)が正式にスタートした。4月1日付で、菱化システム(現社名は三菱ケミカルシステム)の科学技術システム事業部が担当していたCCS関連の事業が、スタッフを含めてほぼそっくり分離・独立したもの。製品のラインアップもそのまま引き継いでいる。資本金は3,000万円で、最大のパートナーである加ケミカルコンピューティンググループ(CCG)が3分の2を出資している。新会社を率いる後藤純一社長に、現在の状況とこれからの意気込みなどを聞いた。

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 − 新生モルシスの立ち上げは順調でしたか。

 後藤社長:会社自体の設立は昨年12月で、年明けからはスタッフが菱化システムとモルシスを兼務するかたちで、新会社への引き継ぎを進めてきた。ウェブサイトも新しくつくりなおしたが、急に変わってしまうとユーザーに不安を与える可能性もあるので、サイトのつくりやページの見た目はあえて変えず、以前と同じような印象にしている。

 − 外側はあまり変わらないようにみえるが、なかは変わっているということですか。

 後藤社長:そうだ。以前は大企業のグループ会社だったので、やはりCCS関連事業には必ずしも合わないルールや、手続きに時間がかかることも多かった。モルシスでは、社内ポータルサイトを立ち上げて、全員が完全に情報共有しながら仕事ができるようにしている。全員にスマートフォンを支給し、外出時にはPCのネット接続にも利用できるようにした。テレワーク申請もクラウドですぐに行えるので、以前よりもかなり働きやすくなると思う。経理などの業務はアウトソーシングしており、管理コストも大幅に低くなっている。

 − 多数のベンダーと代理店契約を再締結する作業があったと思いますが、かなりたいへんでしたか。

 後藤社長:今年2〜3月ですべて正式に契約を結んだが、これはかなりスムーズだった。基本的に、すぐに賛意を表明してくれた。パートナー各社も小さな会社がほとんどであり、むしろ付き合いやすくなるとみてくれたようだ。CCGがマジョリティーを得ていることで、モルシスを介して、この機にCCGと関係を深めたいというベンダーもある。

 − 初年度の経営の見通しはいかがでしょう。

 後藤社長:まずは経営を安定させることが大切だと思っている。会計年度はCCGに合わせて7月決算にするが、菱化システム時代でこの事業は安定期に入ってきていた。ほとんどの製品は年間使用権での契約なので、極端な売り上げの増減はない。それに、菱化時代よりも経費は大幅に抑えられるので、初年度から黒字でスタートできると見込んでいる。

 むしろ、社内的な課題は人事制度だ。一般のSE(システムエンジニア)であれば、資格も含めてしっかりとしたキャリアパスがあるが、CCS事業に携わる人間にはそぐわない。それで、モルシス社員が仕事がしやすく、やりがいがあり、将来展望を持てるような人事制度をつくる必要があると考えている。これについては、前の会社の人事部の知恵も借りて進めていくことにしている。

 − モルシスはCCGの子会社というかたちになるわけですが、CCGとの関係はどのように変化しますか。

 後藤社長:菱化時代から、SVL(MOEに使われている開発用のプログラミング言語)を使用した独自開発のアプリケーションが海外のユーザーにも広く利用されているほか、ベータ版の開発にも関わってきていたり、中国でのMOEユーザー会の組織・運営をサポートしたりするなど、もともと単なる販売代理店という関係ではなかった。今後は、CCGの子会社の立場で、これまで以上に国内ユーザーの要望を的確に開発元に反映させることができると思うし、国内独自のニーズに対応したSVL開発もさらに積極的に取り組みたい。

 目標は、開発元と同じレベルの技術力を身につけること。モルシス社内の技術陣のレベルアップを図るため、大学との共同研究などを促進し、その成果を論文にしたり学会で発表したりすることを奨励していきたいと考えている。いずれにしても、より技術を重視した会社にしたい。

 − 現在のCCS市場をどうみておられますか。具体的な経営目標は。

 後藤社長:コンピューターを利用した研究開発支援という大きな枠組が廃れることはないし、ますます日常的な技術・研究ツールになっていくことは間違いない。計算化学の専門家から一般の実験研究者へとユーザーの裾野も広がっていくが、本質的にコンシューマーなソフトではないため、開発元とユーザーの間に入って技術的なサポートを提供するわれわれのような企業の存在意義はこれからも変わらないと思う。

 ただ、無理な規模拡大は狙わない。モルシスの技術を生かし、付加価値をつけられる分野にフォーカスしつつ、安定して利益を出せることを基本に、安定成長志向で堅実にやっていく考えだ。

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<関連リンク>:

モルシス(トップページ)
https://www.molsis.co.jp/

CCSnews(モルシス設立を報じた記事)
http://www.ccsnews.jp/ccs2/2016/4q/2016_4Qrsitomolsis.htm


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