東工大が中分子対象のIT創薬専門研究拠点を開設

文科省プロジェクトに採択、川崎市との産学官連携事業として展開

 2017.08.05−東京工業大学は7月31日、IT創薬技術と独自のペプチド合成技術などを融合した中分子IT創薬研究拠点を、川崎市の殿町国際戦略拠点「キングスカイフロント」に設立すると発表した。東工大と川崎市が共同で提案した「IT創薬技術と化学合成技術の融合による革新的な中分子創薬フローの事業化」が、文部科学省の「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」に採択されたもの。年間1億5,500万円の補助金を利用して成果を目指す。中分子創薬分野にIT創薬の研究手法を導入する試みは独自性が高く、その専門施設は世界初になるという。

 東工大が設立するのは「中分子IT創薬研究拠点」(MIDL)。情報理工学および生命理工学の学問的蓄積とスーパーコンピューター「TSUBAME」を生かして、異分野の研究員が集結し、IT創薬技術、人工ペプチド・人工核酸合成技術などのコア技術の融合と発展を図る。また、川崎市内のIT系・化学系・創薬系の企業が参加する大型の産学官連携事業として展開していく計画で、現時点で川崎市産業振興財団、川崎信用金庫、横浜銀行、浜銀総合研究所、みらい創造機構、ファストトラックイニシアティブ、MVP、ペプチドリーム、レベルファイブ、情報数理バイオ、カタリスト、モジュラス−の参加が決まっている。

 中分子は、ペプチドや核酸など、分子量が500〜30,000程度の分子を指す言葉。分子量500以下の低分子創薬に対し、近年は抗体などの高分子を使った創薬が注目されたが、人工的な合成はできず、高度に管理された条件下で動物細胞を使って作成されるため、薬の価格がきわめて高額になるという問題があった。中分子は化学合成が可能でありながら、高分子に似た利点を有していることから、次世代の創薬の新たな中心になると期待されている。

 なお、今回の事業化プロジェクトリーダーは、情報理工学院情報工学系の秋山泰教授が務める。文科省プロジェクトとしての支援期間は、2022年3月までの5年間。

******

<関連リンク>:

東京工業大学(プロジェクトリーダーの秋山研究室のトップページ)
http://www.bi.cs.titech.ac.jp/web/top_ja.html

キングスカイフロント(トップページ)
http://www.king-skyfront.jp/


ニュースファイルのトップに戻る