東工大・長崎大の研究グループがスマート創薬で成果

NTDs分野で4個のヒット化合物発見、トリパノソーマ科寄生原虫が対象

 2017.08.01−東京工業大学科学技術創成研究院スマート創薬研究ユニットの関嶋政和准教授(ユニットリーダー)、東京工業大学情報理工学院情報工学系の秋山泰教授、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科の北潔教授(研究科長)らの研究グループは7月27日、計算と実験を効果的に組み合わせるスマート創薬手法により、“顧みられない熱帯病”(NTDs)に有効と考えられる4個のヒット化合物を発見したと発表した。シャーガス病やリーシュマニア病などの原因となるトリパノソーマ科寄生原虫の創薬標的であるスペルミジン合成酵素をターゲットとしたもので、ハイスループットスクリーニング(HTS)と比べて20倍以上高いヒット率で今回のヒットを得ることができたという。

 NTDsは、主に開発途上国の熱帯地域、貧困層を中心に蔓延しているウイルス、細菌、寄生虫などによる感染症を中心とする疾病。世界で累計10億人以上の患者がいるとされる。

 研究グループは、秋山教授と北教授、アステラス製薬熱帯感染症研究チームが連携して、2012年に開発したNTDs創薬研究向け統合データベース「iNTRODB」を活用して、トリパノソーマ科寄生原虫の全遺伝子情報(約2万7,000件)、タンパク質構造情報(約7,000件)、関連化合物情報(約100万件)をもとに、創薬標的としてスペルミジン合成酵素を決定。

 次に、東工大のスーパーコンピューター「TSUBAME」を用いて、スペルミジン合成酵素の機能を阻害する化合物候補約480万化合物に対し、標的構造とのドッキングシミュレーション、分子動力学シミュレーションを実施して、候補化合物を176に絞り込んだ。さらに、実際にアッセイ試験を行って、阻害活性のある化合物4個を発見した。研究グループでは、シミュレーション上の標的部位にヒット化合物が結合していることを、X線結晶構造解析でも確認ずみだという。

 研究グループは今後、今回みつかったヒット化合物が、細胞中に存在するトリパノソーマ科寄生原虫に対して実際に殺原虫活性を示すかどうかを確認していく。また、今回のスマート創薬手法を他の疾病にも適用し、創薬コストの削減を目指していくとしている。

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東京工業大学(スマート創薬研究ユニットのトップページ)
http://www.cbi.c.titech.ac.jp/acdd/top_ja.html

東京工業大学(関嶋研究室のページ
http://www.bio.gsic.titech.ac.jp/

東京工業大学(秋山研究室のページ)
http://www.bi.cs.titech.ac.jp/web/top_ja.html

長崎大学大学院(熱帯医学・グローバルヘルス研究科のトップページ)
http://www.tmgh.nagasaki-u.ac.jp/?lang=ja

iNTRODB(トップページ)
http://www.bi.cs.titech.ac.jp/introdb/


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