CCS 特集2017年冬:富士通九州システムズ

共同研究を基盤に機能強化、医療分野への応用進展

 2017.12.05−富士通九州システムズ(FJQS)は、富士通やモルシスとの連携に基づいて幅広いCCS製品群を提供する一方、薬物代謝や毒性予測などの分野でシミュレーションソフトの自社開発も志向。最近は学会発表に力を入れ、新しい応用領域へのアプローチも進めてきている。

 とくに、「DDI Simulator」は、薬物の併用投与時に副作用の原因となる薬物相互作用を定量的に予測するソフト。薬物の体内動態パラメーターに基づいて、基質薬物の挙動を数理モデルでシミュレーションする。今後の機能強化としては、小腸代謝、誘導モデルの改良を進めており、小腸における阻害剤の濃度推移を考慮したシミュレーションが可能になる。さらに、トランスポーターモデルも改良しており、肝臓を5つのコンパートメントに分割して、やはり濃度分布などを詳細に予測できるようにする。どちらも来年春に新機能として実装される予定。その後も、体内動態で非線形性を示す薬物への対応、代謝物の血漿中濃度推移の予測、代謝物による薬物間相互作用の予測などの機能強化を行っていく。

 また、薬理活性・薬物動態・毒性スクリーニングに役立つ「ADMEWORKS」は、国プロをはじめとした外部との共同研究を通して機能の拡張を進めていく方針。国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)が実施している「グローバルQSARプロジェクト」に唯一の国内ベンダーとして参加し、ICH M7関連の予測モデル改良に取り組んでいるほか、2015年度から日本医療研究開発機能(AMED)が推進する「創薬支援インフォマティクスシステム構築」プロジェクトの「多階層データの統合モデリングによる薬物動態予測システムの構築」のメンバーとしてプログラム開発を担当している。これは、基質選択性モデルをベースに薬物代謝部位を予測するプログラムで、将来的には「ADMEWORKS」に組み込みたいという。

 さらに、今年からはハンブルク大学との共同研究もスタートした。代謝予測システムをターゲットとしており、ディープラーニングやランダムフォレストなどのAI(人工知能)/機械学習を応用する。共同研究者は、国際的に知名度が高いヨハネス・キルクマイヤー博士(Johannes Kirchmair)で、このモデルが「ADMEWORKS」に採用されれば、海外向けの販売に弾みがつくと期待される。

 一方、学会発表は実績のあるCBI学会に加え、11月に行われた日本医療薬学会での発表が注目された。フィンランドのゲノム薬理学ナレッジベース「GeneRX」を利用し、「DDI Simulator」と組み合わせて、患者の遺伝子型に合わせた薬剤の推奨処方を提案する共同研究・実証実験を神戸大学病院および三重大学病院と進めている。また、9月には大学病院の薬剤部の研究者らが集まる日本TDM学会にも出展し、治療薬物モニタリング(TDM)への応用についてさまざまな意見をもらうことができたという。


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