CCS特集2017年冬:モルシス

30年の経験踏まえ技術重視、生命系で2つの新製品

 2017.12.05−モルシスは、今年4月に菱化システムの科学技術システム事業部が推進していたソフトウエア事業を引き継いで誕生したベンダーで、計算化学分野と情報科学分野に特化した研究開発向けソリューションを専門としている。この分野で30年の経験があり、技術サポートには定評があったが、独立後はさらに技術重視の基本方針を掲げており、開発元での技術トレーニングを受ける機会もさらに増やして、国内のユーザーにそのノウハウをフィードバックしていく。

 同社は、生命科学と材料科学の両分野で豊富な製品群を揃えており、海外を中心に20社以上の製品を取り扱っている。主力の統合計算化学プラットホーム「MOE」(加CCG社)をはじめ長年扱っている製品も多く、ユーザーのレベルも高いため、なかには開発元も驚くような使い方をするケースもあるという。それをサポートする同社の技術力も鍛えられており、独自に論文発表をすることも少なくない。

 こうした評判は海外のCCS業界にも伝わっており、新しいベンダーから代理店になってほしいという依頼が来ることも多いという。それで、独立後に早くもいくつかの新製品を投入している。

 一つは、MN-AM(独モレキュラーネットワークスと米アルタミラの共同事業)が開発した化学物質の安全性・リスク評価ソリューション。毒性・安全性に関する既知の情報を集めたデータベース「ChemTunes」と、毒性予測ソフト「ToxGPS」から構成されており、毒性予測は知識ベースと統計ベースの両方の手法に対応している。ICH M7に対応したリスク評価と管理のためのワークフロー機能も搭載している。世界では150サイトに導入実績があり、国内では医薬だけでなく、農薬や食品分野からも引き合いを得ている。

 二つ目は、スペインのケモターゲット社の「CLARITY」で、医薬品研究開発におけるデータサイエンスプラットホームとなる製品である。これは、同じスペインのプロウスインスティチュートが提供していた「SYMMETRY」の後継製品という位置づけで、プロウスが今年5月にケモターゲットに投資し、豊富なデータベースを提供したことで製品化が実現した。

 化合物の有効性や安全性に関わる作用機序を予測し、活性や毒性、薬物動態、代謝物とその薬理学的影響といったプロファイリングを行う機能がある。化合物ライブラリーのバーチャルスクリーニング、標的タンパク質決定後の解析、ドラッグリポジショニング、潜在的な毒性や安全性の問題の予測、オフターゲットの相互作用の判別、代謝物に関連する安全性問題の把握などに活用できる。

 プロウスが整備した100万化合物におよぶトレーニングセット(データベース)を搭載しており、ケモターゲットが得意とする10種類のデータ解析手法(ターゲットとの親和性予測で6種類、安全性との関連の予測で4種類)を利用することで予測精度を大幅に高めている。ウェブアプリケーションであり、操作性は大きく変わらないが、画面や情報の見やすさは向上しているという。

 一方、材料科学分野では、米マテリアルズデザインの材料設計支援統合システム「MedeA」が無機材料向けで、独コスモロジックの熱力学物性推算ソフト「COSMOtherm」が有機材料向けで人気が高い。マテリアルズインフォマティクスのための物性情報を生成するという用途で注目が集まっているようだ。


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