分子機能研究所がインシリコ創薬機能を大幅強化

容易にタンパク質の全系量子力学計算、Vinaによるスクリーニング自動化も

 2018.03.09−分子機能研究所は、独自の技術に基づく創薬分子モデリングシステムを機能強化し、このほど販売開始した。量子力学計算のGaussian、分子動力学計算のNAMD、フラグメント分子軌道法のABINIT-MPおよびGAMESS、ドッキング解析プログラムのAutoDock Vinaといった外部プログラムと高度に連携し、最先端インシリコ創薬のための統合プラットホームとして大幅に機能強化している。とくに、生体高分子を対象にした全系量子力学計算や、高精度インシリコスクリーニングなどを、わかりやすく確実に実行できることが特徴になっている。

 同社のソフトは、米ハイパーキューブの統合分子モデリングシステム「HyperChem」の基本機能を使用しつつ最新の外部プログラムを組み合わせた、SBDD(ストラクチャーベースドラッグデザイン)のための統合システム。具体的には、「Homology Modeling for HyperChem」(HMHC)と「Docking Study with HyperChem」(DSHC)の2つがあり、今回それぞれリビジョンH1に機能強化された。

 HMHC H1は、創薬ターゲットのタンパク質分子をモデリングしたあと、NAMDで10〜100ナノ秒スケールの分子動力学(MD)計算を実施。その後に、リガンド周辺を量子力学/分子力学ハイブリッド型(QM/MM)のGaussian ONIOM法で構造最適化し、フラグメント分子軌道法(FMO)のABINIT-MPなどを用いてリガンドとの結合親和性を評価することが可能。MD計算のあと直接FMOを実行すると、計算が収束しなかったり異常なエネルギー値が出たりする場合があるが、同社ではONIOM法を間にはさむことで正常な解析ができることを確認しているという。今回の最新版は、異なるソフトを連携使用するためのフォーマット変換を含め、一連のプロセスをスムーズに実行できるインターフェース機能を実装している。

 一方、DSHC H1はドッキングスタディをメインとしたパッケージで、速度重視や精度重視などさまざまな解析機能を備えているが、今回の最新版はAutoDock Vinaによるインシリコスクリーニングをサポートしたことが最大の特徴。AutoDock Vinaは、無償で利用でき、AutoDockよりも高速・高精度なため最近人気があるが、ファイルを1つずつ処理する仕組みであるため、スクリーニングには使いづらかった。今回、バッチファイルを連続的に流し、最後に計算結果をまとめて可視化する機能を実現したことにより、ファイル準備から実行、閲覧、絞り込みまでのバーチャルスクリーニング自動化を実現した。

 3月25日から金沢で開かれる日本薬学会第138年会で関連の研究発表を行う(講演日は27日)ほか、6月7日からの日本コンピュータ化学会春季年会でシステムの展示・実演を行うことにしている。

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<関連リンク>:

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http://www.molfunction.com/jp/


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