「STNext」が浸透・利用割合80%超へ

システム制限値を大幅に緩和、検索・表示速度も向上

 2019.08.15−化学情報協会(JAICI)が提供している「STNext」が機能強化され、利用頻度も向上していることがわかった。7月に東京・大阪で実施されたSTNユーザーミーティングで最新機能が披露されたもの。今回のユーザーミーティングはプログラム全体がほぼ「STNext」に焦点を当てたものとなった。特許・文献・物質情報などを調査するためのプロフェッショナル向け検索ツールで、システム制限が緩和され、1億件までのヒットが可能になったとともに、検索スピードも大幅に向上した。JAICIでは、STNユーザー向けにさらに利用を広げることを呼びかけていく。

 STNは、米ケミカルアブストラクツサービス(CAS)と独FIZカールスルーエが共同で運営しているオンラインサービスで、化学物質情報、世界中の特許情報のほか、医学・薬学・生物、エンジニアリング・工学・物理分野の学術文献など、100種類以上のデータベースを利用できる。網羅性とともに、コマンドを利用した柔軟で高機能な検索が可能なため、知財専門家のためのオンラインサービスとして広く利用されている。

 STN自体は大きく2つに分かれており、継続的に発展してきた「Classic STN」と、完全ウェブベースでシステム自体が刷新された「STN新プラットフォーム」の2種類のサービスを選択できる。「Classic STN」は、専用クライアントの「STN Express」やブラウザーベースの「STN on the Web」で利用できるが、今回「STNext」への移行が大きく進んでいることがわかった。「STNext」は2017年6月にリリースされたが、昨年6月時点では利用割合が33%に留まっていたが、今年6月時点では81%にまで伸びてきている。ヘルプデスクへの質問も増加傾向だという。

 この1年間の機能強化としては、新しいURLでサービスが提供されるようになりパフォーマンスが改善されたほか、ログイン画面でパスワードが再設定できるなど利便性が向上した。とくに、検索機能に関してはシステム制限値の緩和が大きなポイントで、1ファイル当たりのヒット数は2,000万が1億に、構造検索のシステム制限も1,200万が1億に引き上げられた。これまでのキーワード検索や構造式検索では、すぐにシステム制限を超えてしまい、質問式を練り直す手間が頻繁に生じたという。

 また、検索結果をダウンロードするレポート機能も大幅に強化された。出力した検索記録をそのままの形式でPDFやワード、テキスト、ZIPなどに落とすことができるほか、見栄えの良いレポート形式としてワードやエクセルに変換したり、入力したコマンドを抽出した質問式サマリーを加えたファイルをダウンロードしたりすることができる。検索記録の中から自分がほしいフィールドだけを選んでドキュメントにしたりワークシートにしたりできる機能で、よく使う設定をテンプレート化しておくことも可能である。

 JAICI内部での検証によると、1年前と比べて検索・表示速度がスピードアップしており、構造検索したあと、文献・特許データベースとのクロスオーバー検索を行うという典型的な処理で、1年前は1分から2分かかっていた時間が、ブラウザーの種類によって若干の違いはあるが、約30秒で完了しているという。構造式や属性情報などの表示もきれいにわかりやすくなっているため、今後は「Classic STN」を利用する際は、操作は「STNext」に一本化してほしいということだ。ブラウザーでアクセスして、IDとパスワードを入力するだけなので、申し込みなども必要ない。

 そのほか、コンテンツ関連では、マルクーシュ構造データベース「DWPIM」が追加されたほか、化学物質の規制に関するデータベース「CHEMLIST」、医薬系データベース「EMBASE」「MEDLINE」、特許データベース「WPI」「INPADOC」などが強化されている。「BLAST」対応など遺伝子配列検索関連の機能も向上している。

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<関連リンク>:

化学情報協会(STN紹介ページ)
https://www.jaici.or.jp/stn/index.php


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