CCSニュースファイル
   2020年7−9月

  • 理研が「富岳」による新型コロナウイルス治療薬探索、MDで候補発見
      2020.07.06−理化学研究所は3日、スーパーコンピューター「富岳」の先行利用(正式な共用開始は2021年度から)で文部科学省と連携して進めている新型コロナウイルス対策研究の一部成果を公表した。これは、京都大学大学院医学研究科の奥野恭史教授らによる「『富岳』による新型コロナウイルスの治療医薬候補同定」プロジェクトで、分子動力学(MD)シミュレーションを利用して既存医薬品データベースから新型コロナウイルスの標的タンパク質に高い親和性を示す治療薬候補を探索した。その結果、計算だけで数十種類の有望な候補を発見できたという。
  • 中外製薬がDX戦略のデジタル基盤にAWSを採用、新薬創出へデータ統合
      2020.07.18−アマゾンウェブサービスジャパンは15日、中外製薬が全社データ利活用基盤として整備中の「Chugai Scientific Infrastructure」(CSI)に、クラウドのアマゾンウェブサービス(AWS)が採用されたと発表した。中外製薬は、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環として、個別化医療の実現やアンメットメディカルニーズ(UMN)への対応を目指し、オープンイノベーション型の研究開発環境を拡充させていく。
  • HPCシステムズとQunaSysが量子コンピューター向け量子化学計算で提携
      2020.07.22−HPCシステムズ(本社・東京都港区、小野鉄平代表取締役)とQunaSys(本社・東京都文京区、楊天任代表取締役)は20日、量子コンピューターを利用した量子化学計算領域の技術開発について業務提携契約を締結したと発表した。それぞれが保有する技術・産業知見および顧客基盤などを共有し、2022年ごろとみられているこの用途で実用的な量子コンピューターの登場に備える。また、豊田通商の協力のもとで、事業開発にも取り組んでいく。
  • 帝人がMI導入に向けて日立製作所と協創、CPSでデータ利活用
      2020.07.25−日立製作所と帝人は20日、新素材や複合化素材の研究開発におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた協創を開始すると発表した。マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の本格的な導入を行い、サイバーフィジカルシステム(CPS)などデータ活用のためのシステム基盤を構築する。さらに、ニューノーマル時代のデジタル化の潮流をとらえ、データ駆動型の研究開発の加速に向けた新たな枠組みも検討していくという。
  • 東京大学が量子コンピューターの社会実装を目指す協議会、産業界と共同
      2020.07.31−東京大学は30日、量子コンピューターの社会実装目指す「量子イノベーションイニシアティブ協議会」(QII協議会)を設立したと発表した。アカデミックサイドの慶應義塾のほか、民間企業9社が設立メンバーとして加わっており、実際に産業界で活用できる量子コンピューター用のアルゴリズム開発、アプリケーション開発に向け、共同研究を進めていく。大学・研究機関、企業の新規メンバー募集も行う。
  • 早大の研究グループが多彩な材料データを一括学習、40種類以上の物性
      2020.7.31−早稲田大学理工学術院の畠山歓講師および小柳津研一教授の研究グループは30日、多様な材料データや異なる物性値を単一の学習モデルに認識・学習させる手法を開発したと発表した。広範な知識を人工知能(AI)に与えることにより、人間のような柔軟な思考力、広い視野を持った判断、予測能力を備えたシステム実現への重要な一歩になるとしている。
  • Elixがアステラス製薬とAI創薬の共同研究、合成可能性の高い構造生成
      2020.08.08−ディープラーニング・機械学習に特化した技術を持つElix(本社・東京都千代田区、結城伸哉代表取締役)は6日、人工知能(AI)を活用した活性予測・化合物生成・逆合成解析のためのアルゴリズム開発を目的とし、アステラス製薬と共同研究を開始したと発表した。合成可能性の高い化合物構造の生成や、より効率の良い合成経路探索に重きを置いて研究を進めるという。
  • ダッソー・システムズが結合自由エネルギー計算を高速化、MSLD法搭載
      2020.08.21−ダッソー・システムズが開発している生命化学向け分子モデリング&シミュレーションシステム「BIOVIA Discovery Studio」(DS)の最新バージョン2020に搭載されたMSLD機能(Multi-Site Lambda Dynamics)が注目を集めている。新薬候補化合物のリードオプティマイゼーションの段階で、構造の変化にともなう結合自由エネルギーを高速に計算することが可能。商用ソフトとして初めて実装したもので、既存の手法よりも2ケタ速く評価できるという。
  • 東工大・関嶋准教授らが新型コロナのファーマコフォアモデリング
      2020.08.21−東京工業大学情報理工学院情報工学系の関嶋政和准教授と物質・情報卓越教育院の安尾信明特任講師、筑波大学医学医療系生命医科学域の吉野龍ノ介助教の研究グループは20日、スーパーコンピューターTSUBAME3.0を用いた分子動力学シミュレーションにより、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のメインプロテアーゼ(Mpro)の複製機能阻害に重要なファーマコフォアモデリングに成功したと発表した。実際に、Mproを標的とする医薬品候補α-ケトアミド阻害剤がこのファーマコフォアに適合していることを確認。今回のファーマコフォアモデルが有効とみられることから、研究グループでは今後、シミュレーションや機械学習、生化学実験を組み合わせたスマート創薬手法を駆使し、新型コロナ治療薬候補となる物質の探索を進めていく。
  • ダッソー・システムズがAI創薬ソリューション「GTD」を提供開始
      2020.08.26−ダッソー・システムズは、人工知能(AI)創薬ソリューションのリリースを開始した。「ジェネレーティブ・セラピューティック・デザイン」(GTD)の名称で昨年半ばから開発を進めてきたもの。化合物ライブラリーを大量に発生させ、多目的最適化(活性や溶解性、毒性など)を実現する機械学習モデルを通して有望な候補を選定し、いくつかは実際に合成してその知見を機械学習にフィードバックさせる。創薬研究にかかる期間と費用を半減させることができるという。
  • 東工大・林准教授らがAI利用しバイオマテリアル設計、生体分子吸着予測
      2020.08.27−東京工業大学物質理工学院材料系の林智広准教授らのグループは26日、人工知能(AI)を利用してバイオマテリアル(生体適合材料)を設計する新たな手法を確立したと発表した。この分野は、材料の物性や生体分子との相互作用をシミュレーションすることが難しいとされているが、今回は独自のデータベースの構築と機械学習によって課題を解決したもの。今回は有機薄膜を対象としたが、数年以内に三大バイオマテリアル(高分子、セラミックス、金属)へも応用範囲を広げていく。
  • LINCが最終報告会、来年4月から新体制で再始動
      2020.09.29−AI創薬の社会実装を目指すライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)は、23日から25日の3日間にわたり、プロジェクトの総括となる全体報告会をオンラインで開催した。2016年11月からスタートした活動はこれで終了。開発成果である約30種類のAIを開示するプラットフォームも完成し、10月15日から会員企業は自由に利用できるようになる。そして、来年4月からはポストLINCとしての活動がスタートする。開発テーマを再選定し、法人化して組織・運営体制も刷新するという。これからの活動も引き続き注目される。

 

 

**************<一般ITニュース>***************

 

  • NECソリューションイノベータがヘルスケア事業会社「フォーネスライフ」
      2020.07.10−NECソリューションイノベータは9日、健康寿命の延伸に貢献することを目的に、ヘルスケア事業会社「フォーネスライフ」を全額出資で設立したと発表した。微量の血液からそこに含まれる5,000種類のタンパク質濃度を一度に測定できる技術を持つ米SomaLogic(本社・コロラド州、ロイ・スミスCEO)と協業し、10月からサービスを開始する。NECグループが有する人工知能(AI)、解析技術を組み合わせることで、現在および将来の健康状態や疾患リスクを示すことが可能。生活改善を実施した場合の望ましい結果をシミュレーションすることもでき、自発的な行動変容を促す役にも立てるという。人間ドックなど医療機関向けのサービスで2029年に300億円、民間との共創事業などを含めて1,000億円以上の事業規模に成長させる。
  • セールスフォースが新型コロナからの業務再始動を支援
      2020.07.17−セールスフォース・ドットコムは15日、新型コロナウイルスに対応したニューノーマル時代の業務再始動を支援するソリューション「Work.com」を日本国内で提供開始したと発表した。従業員の健康管理、3密を避けた人員配置、従業員の安全に関する知識取得などの研修実施などを、クラウド上で効率良く実施することができる。自然災害への対応にも役立つ。順次機能を増やしていくほか、パートナーによる関連サービスも組み合わせていく。初めてのユーザーがこのサービスだけを利用することも可能だという。
  • BlackBerry CylanceがAPT攻撃に関する脅威レポート、攻撃手法巧妙化

 

 


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