スーパーコンピューター「富岳」が共用開始

15万8,976個の高性能CPU搭載、74件の研究課題で利用

 2021.03.10−理化学研究所と富士通が開発・整備を進めてきたスーパーコンピューター「富岳」が完成し、9日から共用が開始された。稼働自体は段階的に進められており、昨年6月と11月の性能ランキング「TOP500」「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」の4部門において、2位に3〜5.5倍の性能差をつけて圧倒的な世界第1位の地位を獲得している。今回、正式な共用開始となり、HPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)のフラッグシップマシンとして、登録施設利用促進機関である高度情報科学技術研究機構(RIST)のもとで利用課題の受付が行われていく。現在、2021年度の一般利用・産業利用課題として74件が採択されている。

 「富岳」開発に向けての議論は、前世代のスーパーコンピューター「京」が完成する前の2010年からスタートしていたという。具体的な設計・開発は理研と富士通の共同で2014年から始まり、2020年5月に筐体の搬入が完了したあと、共用開始に向けた開発と利用環境整備が進められてきた。

 心臓部のCPU「A64FX」は、Arm v8.2-A SVE命令セットを理解する汎用的な機能を持つが、マイクロアーキテクチャーは独自のもの。専用のCPUメモリーユニットは、1枚に2CPUを搭載し、毎秒400ギガビットの光コネクターモジュールを内蔵している。メモリーはCPU内にシリコンインターポーザで接合されており、一般のサーバー用CPUの8〜10倍のバンド幅を持っている。専用ラック1台にCPUメモリーユニットが192枚装着され、384ノード(CPU)の構成となる。「富岳」全体では432台のラックが並び、総計のCPU数は15万8,976個、理論最大性能は約44京2,010兆FLOPS(毎秒の浮動小数点演算回数)に達する。

 「富岳」に関しては、ポスト「京」重点課題プロジェクト、さらに富岳成果創出加速プログラムとして、アプリケーションの開発や最適化が同時に進められたことが特徴であり、共用開始と当時に実用的なスパコンとして利用できる点が注目される。アプリケーションの実行性能として、「京」の100倍を目標に開発が進められたが、現時点の平均で67倍の性能を実証。とくに、分子動力学プログラムの「GENESIS」は131倍以上を達成しているという。

 2020年10月からは、「富岳」上でソフトの動作確認・移植・性能評価を行う目的で利用準備課題の募集が行われた。91件が採択されたが、そのうち25%が産業界、19%が海外のグループ(シンガポールと米国で過半数)からの応募だった。また、全体の49.5%は「京」の利用経験がなかった。2021年度の公募で採択された74課題の内訳は、物質・化学・材料が17件、バイオ・ライフが12件、工学・ものづくりが19件などとなっている。全体の22%が産業利用である。次回の利用課題募集(2021年度B期)は、4月13日から開始される。

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<関連リンク>:

理化学研究所計算科学研究センター(R-CCSのトップページ)
https://www.r-ccs.riken.jp/jp/

高度情報科学技術研究機構(RISTのトップページ)
https://www.hpci-office.jp/

富士通(トップページ)
https://www.fujitsu.com/jp/


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