富士通がAI創薬基盤「SCIQUICK」を新発売

製薬企業7社が学習データ提供、AMEDプロジェクト商用化

 2021.01.27−富士通は、人工知能(AI)創薬基盤「SCIQUICK」(サイクイック)を製品化し、2月2日から新発売する。日本医療研究開発機構(AMED)の創薬支援推進事業「創薬支援インフォマティクスシステム構築」での共同研究成果がベースになっており、化学構造式から薬物動態や毒性を予測することが可能。同種のソフトには海外の製品が多いが、医薬基盤・健康・栄養研究所、理化学研究所、明治薬科大学の協力で開発された最新予測モデルを搭載しているほか、国内の製薬企業7社が提供したデータを反映するなど、日本ならではの製品となっているところに特徴がある。

 今回の「SCIQUICK」は、同社が2004年から開発を進めてきた「ADMEWORKS」の後継製品という位置づけ。旧製品と比べて利用できる予測モデルの種類が増え、それぞれの予測精度も大きく向上している。

 具体的な提供モデルとして、ADME関係(モデル開発元は医薬基盤・健康・栄養研究所)で膜透過性、溶解度、吸収率、p-glycoprotein(P糖タンパク質)輸送能、脳ホモジネート結合、血漿タンパク結合、肝固有クリアランス、尿中未変化体排泄率、尿中排泄型、胃クリアランス、心毒性関係(モデル開発元は理化学研究所)でhEGR阻害モデル、肝毒性関係(モデル開発元は明治薬科大学)で胆汁うっ滞性肝毒性、細胞障害性肝毒性、肝臓がん、薬物誘発性肝毒性、富士通オリジナル開発でAMES、皮膚感作性、発がん性、CYP阻害−が用意されている。

 このうち、溶解度、p-glycoprotein輸送能、脳ホモジネート結合、血漿タンパク結合、肝固有クリアランス、hERG阻害には、製薬企業から提供されたデータを加えてデータ数が大幅に増加しており、予測可能な化合物の適合範囲も広がっている。とくに、溶解度や血漿タンパク結合、肝固有クリアランスでは、企業データの方が数が多くなっており、注目されそうだ。

 「SCIQUICK」にはモデル構築機能も搭載されており、ユーザーが社内データや公共データを自分で集めて入力し、機械学習を行い、モデルを検証して仕上げるまでの一連の作業を簡単に行うことが可能。内蔵されている既存モデルを自分で改良することもできる。社内システムとして利用できるためセキュリティ面で安全であるほか、社内の他システムと接続するためのインターフェースも用意されているので、柔軟な活用が可能である。

 価格は、モデル作成機能を含めた本体の一括ライセンスで200万円から、年間ライセンスは80万円からとなっている。

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<関連リンク>:

富士通(ソーシャルデザイン事業のページ)
https://www.fujitsu.com/jp/innovation/socialdesign/


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