2022年夏CCS特集:アドバンスソフト

汎用型GNN力場を提供、機械学習で自動生成も効率化

 2022.06.28−アドバンスソフトは、高度な計算科学技術に支えられたデジタルエンジニアリング分野におけるリーディングカンパニーを目指して、さまざまな科学技術計算分野でパッケージソフト開発やコンサルティングサービスを提供。とくに近年、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)への適用を意識したナノ材料のモデリング&シミュレーション分野で実績を伸ばしている。

 同社の各種製品群の中でとりわけ成長しているのが、ナノ材料解析統合GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ソフト「Advance/NanoLabo」と、ニューラルネットワーク分子動力学システム「Advance/NeuralMD」の2つ。NanoLaboは、今年2月にリリースした最新バージョン2.4で汎用型グラフニューラルネットワーク力場(汎用型GNN力場)をサポートしたことで注目を集めている。これは、フェイスブック(現メタ)がカーネギーメロン大学と共催した「オープンカタリストプロジェクト」で開発された技術で、商用ソフトのGUI対応として実装したのは初めて。もともと、分子動力学(MD)計算で使用する力場は、計算対象の系に適したものを用意する必要があり、有機と無機、分子と結晶など異なる系を同じ力場で計算することは難しかった。汎用型GNN力場は、約1億3,000万件の第一原理計算を実行し、その計算結果を教師データに使用して機械学習によりつくり上げたものとなっている。

 使い方は簡単で、NanoLaboのGUIでMDエンジンのLAMMPSを選択し、汎用型GNN力場を適用させるだけ。触媒や表面・界面を対象としている研究者からの評価は高い。ただ、計算量が大きいためGPU(グラフィックプロセッサー)が必要になるなど計算資源の敷居が高いほか、触媒系以外では定量的な計算精度に劣るという課題もわかってきたという。

 そこで今回、利用者が自分でニューラルネットワーク力場を作成できるNeuralMDを機能強化した。5月末にリリースしたばかりの最新バージョン1.6には日本原子力開発機構の永井佑紀副主任研究員(システム計算科学センター・シミュレーション技術開発室)で開発された「自己学習ハイブリッドモンテカルロ法」が搭載されている。計算対象にしたい系を代表するような分子構造を用意し、それをQuantumESPRESSOの入力ファイルとして与えるだけで、その系に合ったニューラルネットワーク力場が自動的に生成される。モンテカルロ法における提案構造として、ニューラルネットワーク力場によるMD計算のトラジェクトリーが適用されるため、第一原理計算の精度を保ちつつ効率的な構造のサンプリングが行える。このモンテカルロ計算と同時に、計算結果を利用して機械学習が並行して実施され、ニューラルネットワーク力場を更新していくことになる。NanoLaboと組み合わせれば、この過程は全自動で行われる。

 この計算にもある程度の計算機資源が必要だが、数週間から数カ月かかっていた力場作成業務を、半日から数日に短縮できるという。先週開催された紹介セミナーでは、開発者の永井研究員が1時間ほどの基調講演を行う間に、クラウド環境で新しいニューラルネットワーク力場を実際に生成し、講演後にその力場で実際にMDシミュレーションするという実演が行われた。力場作成を大幅に効率化/自動化する技術として注目される。


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