2022年夏CCS特集:日立ハイテク

分析環境と受託解析提供、オール日立でのMIサービス

 2022.06.28−日立ハイテクは、材料開発におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を支援するため、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)を活用した「材料開発ソリューション」を提供開始した。昨年11月に事業化したが、今年4月に組織化したマテリアルソリューション部のもと、オール日立による横断的な取り組みとしてさらなる戦略強化を図っていく。日立グループが総力を挙げているカーボンニュートラルにも寄与する事業として、グローバル化も視野に入れている。

 今回のサービスは、日立製作所が“協創”を核にDXを実現するコンセプト「Lumada」の関連で開発・運用しているMIプラットフォームを利用したもの。すでに多くのプロジェクトを実施した実績があるが、ちょうど1年ほど前から、プラスチック材料などを手がけている日立ハイテクの商事部門(マテリアルソリューション部)との話し合いが進んだ。ドメイン知識があり、関係する顧客を持っていることから、MIビジネスを発展させるためのパートナー関係が確立した。

 具体的には、ユーザー自身が材料データを分析できるMI環境をクラウドで提供する「材料データ分析環境提供サービス」と、顧客の材料データを同社が預かって分析の代行をする「材料データ分析支援サービス」の2つからなっている。前者では、わかりやすいユーザーインターフェースにより、データ分析の経験のないユーザーでも簡単に利用できるほか、知識のあるユーザー向けに自分で記述した分析アルゴリズムをシステム上に登録できる機能も用意している。同社の専門技術者によるサポート・サービスや、データサイエンティスト教育のカリキュラムも提供可能。後者は、受託による分析を行うサービスで、物性予測による原料組み合わせの最適化、特許からのテキストマイニングによる実験データ自動抽出、材料画像のイメージ解析などの利用が想定されている。

 とくに、機械学習用データを整える前段階として、自然言語処理(NLP)に基づくテキストマイニング技術、また材料の断面画像から特徴量を抽出する画像処理技術に長けていることが強み。また、同社は計測器事業として、電子顕微鏡や熱分析・粘弾性装置、液体クロマトグラフィー、分光分析、X線、質量分析、NMR、電気化学分析など各種装置を手がけている。今後、これらの実験装置とMIプラットフォームとの連携も図っていく考えで、まずは今年度内に熱分析装置と接続する計画だという。データを集めるところからMIを実施するまで、IT基盤も含めてオール日立でまかなえる点もメリットになるといえそうだ。

 さらに、子会社の日立ハイテクソリューションズがデータの前準備なしにMIを実施できるSaaSサービス「Chemicals Informatics」を提供中。こちらは、特許や学術論文から収集した1億以上の化合物データベースを整備しており、人工知能(AI)による探索をすぐに行うことができる。今回の「材料開発ソリューション」と組み合わせることで、さらに幅広いユーザーニーズに応えることが可能である。

 一方、カーボンニュートラルとの関係では、MI自体が実験回数の削減や機能素材の開発で貢献できるほか、プラスチックに関する知見を生かし、プラスチックリサイクルに寄与するテーマをMIと組み合わせることも検討したいという。社内の環境ソリューションチームとの連携や、日立グループでカーボンニュートラルに関わる研究所との連携も考えていく。また、MIビジネスはグローバル展開でのチャンスもあるとみており、これも今年度内にはめどを付けたいとしている。


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