2022年夏CCS特集:化学情報協会

3種の配列検索機能実装、AI利用した先行技術調査も

 2022.06.28−化学情報協会は、米国化学会(ACS)の情報部門であるケミカルアブストラクツサービス(CAS)との長年のパートナーシップのもと、科学者向け情報検索ツール「CAS SciFinder-n」、知財・情報専門家向け検索ツール「CAS STNext」などを提供している。研究開発や知財関係の調査業務に役立つソリューションとして、価値を高める努力を継続的に払っており、今年についてはとくにバイオ、ライフサイエンス分野での機能拡張を図る計画だという。

 これらはウェブブラウザー経由で利用するシステムで、前者は一般の研究者向け、後者は特許などの専門家向けとして、操作性や機能の違いはあるが、大本のデータはCASが学術文献や世界中の特許情報から人手をかけて収集・蓄積したもので、コンテンツの精度や信頼性に大きな特徴がある。

 両製品とも、ウェブ版がメーンになってから機能等のアップデートの頻度が高いが、最近ではとくにユーザーのフィードバックへの対応が早くなったとして歓迎の声があがっている。例えば、昨年実装された配列検索機能の強化は日本のユーザーからの要望が反映されたもの。まずは、特許と学術雑誌からCASの専門スタッフが人手で配列情報を収集したあと、米NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)からのデータを加え、総計6億件の配列情報を登録。オリゴ、アプタマー、アンチセンスヌクレオチド、siRNA、miRNA、プローブ、プライマーなどもカバーしている。とくに、BLAST、CDR、Motifの3タイプの検索が同時に行える点で高評価を得ているという。

 また、人工知能(AI)を利用した先行技術調査機能も注目される。これは、特許を出願しようとする際、自分よりも先行した研究や特許がないかを調べる作業。先行技術を調査することで研究開発の種やヒントを得ることもできるほか、開発の方向性を左右することもあるが、調査する情報量が膨大になってしまう。今回、SciFinder-nとSTNextに組み込まれたAI応用のPaSE技術を使用すると、類似した文献・特許を自動的に検索し、見ておくべき技術文献を200件ほどピックアップしてくれる。手作業で調査する場合では漏れてしまうような文献が出てくることがあるという。もともとは、ブラジル特許庁と共同開発した技術であるようだ。


ニュースファイルのトップに戻る