2022年夏CCS特集:QuesTek Japan

金属材料設計開発で実績、データと計算活用し高度機能

 2022.06.28−QuesTek Japanは、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)との合弁会社として日本市場に本格的に進出。この1年間でいくつものプロジェクトを実施し、顧客企業からの技術評価が進んできている。想定範囲を超えるデータが取得できた、開発期間短縮が期待できるなどのフィードバックが得られており、今後事業を広げる準備もしていきたいという。

 同社は、マテリアルズ・バイ・デザインと呼ばれる独自のICME(インテグレーテッド・コンピューテーショナル・マテリアル・エンジニアリング)に基づいたソリューションを構築している。材料プロセス、材料組織、材料特性、材料性能の間の相関関係を見いだし、データサイエンスと計算シミュレーションの両方を駆使して要求性能を満たす材料設計やプロセス最適化を行う。米海軍機の着艦フックに採用された新合金「Ferrium M54」、積層造形用の高強度アルミニウム粉末「QT-7X」など多数の成功事例があり、これらはライセンシングもされている。

 とくに、国内でもニーズが増えているのが3Dプリンターによる積層造形で、材料そのもの(設計や物性の改良)からプリンティング条件の最適化までトータルに支援できることが強み。日本市場では、とくにカーボンニュートラルへの対応も商機にする考えで、例えば水素社会を支える水素貯蔵容器向けに水素脆化に耐える材料探索、熱処理プロセスの改善によるCO2排出削減、リサイクルに適した材料開発−といったテーマにICMEが有効であることを訴えていく。

 一方、同社の事業は、CTCの材料・CAEビジネス推進部と一体的に運営されており、シミュレーション技術の活用や電子実験ノートによるデータ基盤の提供など、幅広いソリューションを手がけていることがアドバンテージになっている。とくに、米エクサバイトの「Mat3ra」(マテラ、旧名称Exabyte.io)は、ナノ材料に対する第一原理計算や分子動力学計算をクラウド上で実行できるもので、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)支援サービスと位置づけている。高精度な計算結果を機械学習のデータとして利用することにより、CTCのデータサイエンティストが最適解を探索する。Mat3raを単品として提供するだけでなく、サービスに組み込むことでユーザーの利便性を高めている。こちらは、高分子や触媒、電池や半導体など有機材料も含めた幅広いターゲットを対象としている。

 また、CTCではスウェーデンのサーモカルク社が開発している熱力学計算ソフト「Thermo-Calc」も販売している。こちらはQuesTekのパートナーでもあり、合金設計でICMEとの連携もしやすい。


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