2022年夏CCS特集:シュレーディンガー

共同研究で成功例が続々、創薬支援の専門サービス提供

 2022.06.28−シュレーディンガーは、創薬および材料開発のための最新科学を反映させたソフトウエアプラットフォームを開発する一方、自社技術を活用した創薬支援事業を展開。共同研究と独自研究の両方で、具体的な創薬パイプラインを推進している。

 同社の全社員770人のうち、125人が創薬チームに所属している。2017年から本格的に事業をスタートさせ、急速に陣容を拡大させてきた。8割はニューヨークに集中しているが、インドのハイデラバードを拡張し、第2の創薬拠点として整備した。化学、生物、計算化学、臨床開発、データマネジメントなど広範な専門家がおり、いわゆるドライラボのスタイルで創薬研究を行っている。

 昨年の事業実績も好調で、総売上1億3,791万ドル(前年比27.6%増)のうち、2,470万ドル(同58.7%増)を記録。現在、進行中のプロジェクトは、自社開発で5件、顧客(日本企業を含む)との共同研究で20件以上あり、ヒト臨床試験にまで進んでいるものがいくつもある。米食品医薬品局(FDA)に承認された医薬品も、抗がん剤分野で2種類生み出されている。

 最近はデジタルケミストリーとマシンラーニングが技術のポイントであり、自社パイプラインのMALT1阻害剤では82億化合物からのスクリーニングを実施。機械学習による構造発生などで探索範囲を広げ、シミュレーションや機械学習で1万3,000件ほどをチョイスし、実際に78種類を合成して評価した。この例は、2年以内にFDAへの新薬臨床試験開始申請(IND)に至ったという。同社によると、技術の有用性をはっきりさせるため、先行品のあるベストインターゲットを選んできたが、今後は対象をファーストインクラスにまで広げたいとしている。

 創薬チームよる共同研究のタイプは、モデリング、デザイン、デザイン+ファンクション、フルインテグレーテッド−の4つがあり、マイルストーンによって報酬を得るスタイルである。合成実験や動物を使った実験を減らすことができることから、サステナビリティの取り組みに貢献するとして注目する顧客もいるという。

 同社は今年2月にXTALバイオストラクチャーズを買収したが、これはX線結晶解析とCRO事業を推進する企業。タンパク質のターゲット構造を迅速に得るためにXTALの技術がさらに活用されると期待される。同様に、クライオ電子顕微鏡の活用にも注目しており、機器メーカーとの提携も進めているという。


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