スイスのAsedaサイエンスが日本市場に意欲
毒性等を判定して意思決定支援、SaaSで統合サービスを提供
2025.06.04−スイスに本社を置くAsedaサイエンス(ブラッド・カルヴィンCEO、Brad Calvin)が日本市場に意欲を示している。事務所の開設などはまだだが、日本人担当者を置き、営業・マーケティング活動を開始した。化学物質の毒性や体内動態を動物実験を使わずに評価するサービスおよび研究用統合ソフトを、「3RnD」の名称で欧米でも提供し始めたところ。独自に蓄積した高品質なデータをもとに、人工知能(AI)を利用して研究上の意思決定支援を行うことができ、医薬・農薬、化学品、化粧品、食品などの研究開発に活用することが可能。医薬品開発受託機関(CRO)としてもビジネス展開している。
同社の設立は2013年。長年にわたってAI向けの高品質なデータセットを戦略的に構築してきており、セルベースアッセイやゼブラフィッシュ試験、バイオミメティクス測定などを実際に行って、5,000種類におよぶ化合物を対象にしたデータライブラリーを整備している。500の創薬ターゲット、600の疾患、400の抗ウイルス薬、200の抗炎症薬、800のキナーゼ阻害剤なども含まれており、化合物との関連ですべてのデータを閲覧できるように、「3RnD」には洗練されたビジュアル化機能が備えられている。
標準的な使い方としては、利用者はまず調べたい化合物を用意して送付する。Asedaサイエンス側で実際に化合物のスクリーニング試験を実施し、解析したデータをフィンガープリントとして学習済みのAIで処理、毒性リスクなどを判定する。利用者はその結果を大規模化合物ライブラリーのコンテキストと合わせてビジュアルに閲覧し、対象化合物に対する迅速な選択と優先順位付けを行うことができる。「3RnD」はSaaS型のサービスで、すべてのツールやサービスへのアクセスを一元的に行うことができるようになっている。プラットフォームはAWS(アマゾンウェブサービス)を使用しており、セキュリティも心配ないという。
「AIや機会学習を活用するためには、もともとのデータが良くないとダメ。化合物の安全性という目的に合わせてしっかりしたバリデーションを経た世界最高のデータを持っていると自負している。研究の初期段階で毒性等を正確に見積もることができるメリットは大きい」とカルヴィンCEO。「科学者がより安全な化合物を設計することを支援でき、臨床試験の成功確率を上げ、動物実験を減らすことにも寄与できる」という。現在、「3RnD」はパイロット版が90サイトでテスト中であり、日本からも参加してもらいたいとしている。
また、「3RnD」からはパートナー各社の製品やサービスにもアクセス可能。その中の1つにサイクランチ社の「SciScore」がある。研究論文を学術雑誌等に投稿する前に利用できるサービスで、数百万件の論文をAIで解析済みであり、入力された論文のメソッド部分を解析してスコアを付け、レポートもしてくれる。数回のやり取りを経て、スコアが上がった論文を正式に投稿することで、論文が通りやすくなるという。3回分で大学関係が40ドル、民間向け50ドルと安価に利用できる。Asedaサイエンスが販売権を持っているため、日本市場でも提供していく予定だ。
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